『 果て 』

 

 

私が好きになる人は私を好きにならない。恋愛をする時に必ずこの言葉が頭をよぎる。悲しいけどこればかりはどうしようもない。相手を振り向かせる力が無いとかそういう話ではない。もう遺伝子レベルで好きな人と自分は結ばれないように組み込まれてるんじゃないかって疑うくらい一方的な気持ちで恋が終わる。

 

 

 

13歳で初恋をした。相手は同じ部活の同級生、U氏。小学校で管弦楽部に入っていた私は中学でも音楽をやりたいという気持ちがあったので吹奏楽部に入部した。(中学に管弦楽部は無かった)小学校からファゴットという楽器を演奏していたので中学でも同じ楽器を引き継ぐ形で担当した。ファゴット木管楽器のなかでも低音で、楽器別の練習だと低音パートというカテゴリーでいつも練習していた。低音パートにはファゴットバスクラリネットバリトンサックス、ユーフォニアム、チューバがいた。U氏はユーフォニアムを担当していた。U氏とは結構話が合った。当時お互いにSCHOOL OF LOCK!!というラジオにハマっていて部活で顔を合わせる度にラジオの話をした。U氏は音楽が好きだった。特にアジカンくるり星野源についてお互い熱く語っていたのをよく覚えている。

 

 

 

眼鏡、天パ、色白、笑うと細くなる目、繊細な指、趣味が合ってそして優しい性格。

 

 

 

好きにならないわけがない。こんなにも趣味が合ってルックスがドンピシャの男に優しくされたら勘違いする。そうして見事に勘違いをして、私は中学3年間U氏に恋をした。クラス替えもあったが同じクラスには1度もならなかった。部活だけの関係。毎日放課後に会って昨日聞いたラジオの話をしてセッションして時間になったらさようならをする関係。

 

 

 

中2のバレンタインにチョコを渡そうと計画した。低音パート全員の分のチョコを作りつつ、さりげなくU氏のチョコだけ豪華にする作戦。U氏のラッピングには手紙を添えた。これからもよろしくみたいなことを書いた気がする。好きですや自分の好意を伝える文は気恥ずかしく書けなかった。翌日、ドキドキしながら部室に向かった。低音パートの皆にチョコを配りながらU氏がどこに居るのか辺りを見回した。U氏が見当たらない。チューバの子に「U氏って今日休み?」と聞いたところ風邪で休みという答えが返ってきた。完全に空回りをした。U氏に気持ちを伝える好機を逃した。その日は失恋したわけでもないのにこの世の終わりみたいな顔をしてチョコを持ち帰り、部活が終わって帰宅してからずっと部屋に閉じこもっていた。今日は気持ちを伝えられなかったけどまだ卒業まで時間はあるし機会はいくらでも作れるじゃないか、そう自分に言い聞かせた。それからもU氏と顔を合わせれば趣味の音楽の話をよくしたがあっという間に夏の最後の大会が終わり文化祭も終わり部活を引退してU氏と顔を合わせる回数が減った。廊下ですれ違っても声をかける勇気が無かった。受験も終わって卒業式が来ても、何も無いまま終わってしまった。好きな気持ちを大切育てた結果、何もアクションを起こせずに初恋が終わってしまった。それから1度も会っていない。

 

 

 

 

あれから7年経ってもU氏のことが忘れられない。他の人と恋愛をしても頭の隅にU氏の名前がこびり付いていて、ふとした出来事で思い出してしまう。こんなにも後悔するならU氏が使っていたマウスピースに間接キッスでもしておけばよかった。もうこの発想が最低。今でも連絡を取ろうと思えば取れるし会おうと思えば会える範囲にお互い住んでいる。この気持ちの果ては何処なのだろう。行動に移す気なんて無いくせに。誰か私に説教をしてくれ。米津玄師を聴くな、lemonの歌詞をU氏に当てはめて号泣するなと。そして私がババアになる前に早くこの呪いの解き方を教えてくれ。

 

 

 

 

上海蟹食べたい。